きのう(3月21日)、NHK総合テレビで生放送された討論番組”日本の、これから”「テレビの、これから」。
テレビの制作者と、一般視聴者が、テレビの未来について討論。視聴者代表の名札が、なぜか苗字のみなのは、視聴者代表について、ネットでの個人情報検索を防止するため、だろうかどうかは知らない。

【制作側出席者】
NHK「日本の、これから」プロデューサー 松尾雅隆
日本テレビ「世界一受けたい授業」プロデューサー 福士睦
TBSテレビ編成局長 吉崎隆
フジテレビ「新堂本兄弟」プロデューサー きくち伸
テレビ朝日「相棒」プロデューサー 松本基弘
テレビ東京「ガイアの夜明け」プロデューサー 加増良弘
朝日放送「探偵!ナイトスクープ」プロデューサー 松本修
北海道テレビ「水曜どうでしょう」ディレクター 藤村忠寿
「全日本仮装大賞」「SMAP×SMAP」など 放送作家 鶴間政行

制作者と視聴者席の前に、ドワンゴ代表・夏野剛、ジャーナリスト・嶌信彦。コピーライター・糸井重里、民放連会長・広瀬道貞、NHK副会長・今井義典。
以下、各年代の視聴者代表。司会は三宅民夫アナ、武内陶子アナ。


「テレビはお茶の間の主役であり続けるか?」という質問。YESは1番、NOは2番の札を挙げる。個人視聴が増えている今、「NO」の答えが多い。
今のテレビに対する叱咤激励と受け止める、とTBS吉崎氏。テレビが作るコンテンツがある限り、テレビはお茶の間の中心でありたい、と語るCXきくち氏。

HTB藤村氏の発言。
「テレビはお茶の間の主役、という言葉自体が、(1の札を)挙げてはいますけど、主役ではないと思うんですよ(会場笑い)。正直ね。ただ、テレビに対して、パソコンだとかゲームだとか、いうモノに対するテレビ、という言い方をすると、テレビは絶対に負けないと思います。脅威ではない。ただ、テレビがある今の状態だと、僕はちょっと危ないかな、と思うんですよ。微妙な感じ。主役ではあり続けたい、と思いますね」
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懐かしいバラエティ番組の映像。テレビ朝日「欽ちゃんのどこまでやるの!?」には、わらべ・高部知子の姿も。「めだかの兄妹」を歌う。
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NHK・民放のゴールデンタイムの番組名を、巨大ボードで表示。NHKで宣伝できるとは思わなかった、とNTV福士氏。

「テレビ番組は楽しいか?」という話に。
最近の番組は内輪話ばかりだ、と会社員・松内さん。肩書き無しの寺谷氏、「フジテレビにお聞きしたい」と言い、過去にCXで放送されていた「NG大賞」や最近の「おばかキャラ」を批判。
NG番組とは無縁のCXきくち氏「他人事のように聞いていましたけど」管轄外の話なので、放送作家の鶴間氏が代弁。今は「がんばった大賞」に衣替えし、NGばかりやっていない前向きな番組、と語る。
小さい子持ちの主婦・秋葉さん「ほとんどテレビは見ないんですけど、最近の番組は不愉快」と語る。
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NHK批判のFAXのあと、今井副会長は、番組は個性的だ、視聴者のほうが、NHKをむしろ型にはめているのでは、という趣旨の話を。
ABC松本氏は、NHKの番組が大好きで、後輩の女性に「ためしてガッテン」を毎週見なさい、と言ったが忘れていた、という話を。女性は、松本Pに言われて結婚退職まで8年間「ガッテン」を見ていた、と。

視聴者の浅野氏。「テレビを見ながら疑問点がありまして」報道番組で、母親が子どもを殺しました、しかし、子どもには重大な障害があって云々・・・報道はどうなっているのか、と語るが、今までの流れを全く無視した発言に困る三宅アナ。後半の「テレビの信頼」でやります、と言い、話を元に戻す。
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TBS「総力報道!THE NEWS」のスタッフルームを突然訪れる三宅アナ。「総力報道」は、「NEWS23」と違って現役リタイヤ組、家庭の主婦、子どもたちが主な視聴者、と語る後藤謙次キャスター。地震情報の訓練をする小林麻耶キャスター。
日テレの新帯番組「サプライズ」の三觜雅人Pにインタビュー。毎日見てもらい、20時台以降の番組の視聴率アップを狙う。

「テレビは視聴者ニーズに応えている?」
会社員・仁礼氏は「昔は視聴者参加番組がたくさんあったのに、今はクイズ番組も芸能人ばかり」と語る。主婦の指月(しげつ)さんは、「視聴者に媚びるのではなく、視聴者をリードして欲しい」高校教師の安田さんは「自分たちの作りたいモノを作って欲しい」と語る。安田さんの言葉に励まされた、と語るEX松本氏「スポンサーへの貢献のために、視聴率は上げなければならない。HDDでCM飛ばされると意味が無くなる」

大学生の豊岡氏は「視聴率はあくまでも”興味のある・なし”(の数値にすぎない)」と語る。番組自体の面白さの数値ではない、と。
広瀬会長「クリエーターは個性が強くて、視聴率が取れないのは、自分の番組が良すぎて取れないんだ、と思いがちなんですよね(EX松本氏爆笑)。独りよがりを排除していかないと、公共の電波を使っている意味がないんで、大事だと思います」。「相棒」を制作しているEX松本氏はかなり工夫している、と。
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制作者の暴走について、局にチェック機能はないのか、と言う視聴者寺谷氏。「視聴率をとるのは、なまじっかなことではない」と広瀬会長。視聴率について電通・奥氏「無いと困るデータと認識している」。博報堂・榊原氏「目安として無くてはならないデータ」。

会社員・岩岡氏。視聴者に視聴率は関係ない、制作者は、放送の文化よりビジネスばかり気にしている、と甲高い声で語る。
HTB藤村氏。
「とてもいいことを言ってると思います。視聴率の話、視聴者には関係ないですよ。ただ、広告代理店のかたがおっしゃった言葉で、使い勝手がいい、とおっしゃいましたよね。確かにそうなんです。テレビは、なぜこんなに視聴率を気にするかと言うと、これでお金稼いでいるんです。テレビ局は。だから絶対無視できないんです。でも、この視聴率を気にしているおかげで、たぶん、皆さんが思っているような番組が、全く同じようになってしまっている、というのは、確かにね、あなたが言うように、そんなこと視聴者知らないよ、そんなこと言うな、と。でも実際そうなっちゃってるのが現実的にはあると思います」
視聴率ではなく”視聴質”という物差しを作らないのか、と言う嶌氏。企業が宣伝のお金を出してくれないと、皆さんの大好きなテレビが見られないんですよ、と言う夏野氏。

テレビをどれくらい信頼していますか?
報道番組について「信頼している」「信頼できないところも多い」「信頼していない」の三択。「信頼できないところも多い」が多いスタジオ。子どもに見せられない、という話ばかりの主婦・秋葉さん。
さっき、自分の質問が無視された浅野氏に、軽く三宅アナが触れ、次の人に行こうとするが浅野氏「しゃべらせてもらっていいですか」促す三宅アナ。
浅野氏「何年か前に”騒音おばさん”というのが話題になりましたね」「ネットの世界では”あのおばさんをおもちゃにしている”(という意見が多い)。バラエティでもおばさんを取り上げ、こんなテレビが何で信頼できるんですか」凍り付くスタジオ。制作者席を見て「(事件について)わかってらっしゃるかたがいるかな・・・」と困る三宅アナ。次の人に話を振る。浅野氏不満顔(笑)。

報道番組に対する不満に、TX加増氏「残念ながらおっしゃってることは、当たっていると思います」「テレビ東京は、まだまだ地位の低い局ですから、その辺での(他局との)差別化を徹底的に教えられてきたので」担当の”ガイアの夜明け”では、一方的な見方は避けるようにしている。報道番組は大変だ、「バンキシャ!」問題もありましたしね、と語る。昔に比べるとジャーナリズム精神が劣化している、と嶌氏。

前半終了。ニュースを挟み後半スタート。
思い出に残っているテレビ番組を、制作者・視聴者ともにフリップで挙げる。視聴者席に「水曜どうでしょう」を挙げている「どうでしょう藩士」(=どうでしょうバカ、とも言う)が4人。
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「水曜どうでしょう」を挙げる主婦の伊藤さん「福岡(KBC)では”水曜どうでしょう”は放送されてないんですよ」主人が出張先でワンセグで録画したモノを見せてもらい、面白いと思いDVD全巻揃えた、これからも見たい番組、と語る。藤村氏「ありがとうございます!」。
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藤村氏の思い出に残る番組は「オレたちひょうきん族」「お笑いウルトラクイズ」。「こういう番組をまた作れるようなテレビ界にしたい」と藤村氏。ABC松本氏は「シャボン玉ホリデー」「てなもんや三度笠」を挙げる。
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「なぜ?若者テレビ離れ」
テレビが部屋にあるが見ない、という若者の生活に密着。娯楽はネットの「ニコニコ動画」で十分、の若者。ニュースはケータイで見るからテレビはいらない、と言う若者。
スタジオアンケート。テレビがない大学生の松下氏。ドラマは興味がないので見ない、と語る。IT会社役員の阿部氏も、他のモノで間に合う、と。映像作家・高嶋氏も「インターネットはいろんな角度から見れる」と語る。主婦・指月さんは、情報や娯楽を得るためではなく感動を得るものだった、と語る。制作者が挙げる番組にドキュメンタリーがないのが不思議だ、と主張。
鶴間氏は「テレビは、これからもっと面白くなるぞ、と。たぶん、こういう時だからこそもっと面白くなりそうな気がする。そう願いたいというか、そう思っていたいですね」
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「テレビ離れが進んでいる」の1番を挙げた藤村氏「テレビマンとしてあるまじき行為ですけども。ですが、指月さんと、高校の先生の安田さんがおっしゃったことが、すごく的を射ていると思うんですけども、視聴者のニーズに応える、と言われたときに、僕は(制作者は)ニーズに応えすぎてる、と思ったんです。テレビがそちらに向きすぎてる、と思ったんです。本来、テレビというのは、視聴者のニーズを掘り起こしたり、ニーズをリードしていったり、という、そういう役割がテレビであり、ジャーナリズムである、と思ったんです。(会場の一部拍手)ありがとうございます。それが今、あまり視聴者の方に向きすぎている、だから離れて行ってしまってるんではないか、ということは、感じます」

トンチンカンな浅野氏が割り込み「すいませんそれ視聴者の方に向いているのでなくスポンサーのほうに向いてるんじゃないですか」
藤村氏「僕が言ってることがですか」
浅野氏「なんかそんな気がするんですけど。今のテレビ局は」
藤村氏「あぁ今のテレビ局は、ですね。ええ、まぁ確かに、そうです(会場笑い)。僕違いますよ」

TBSラジオ好きの大学生・豊岡氏の話から、視聴者との「双方向性」の話に。
「テレビはつながっていないのか」・・・TBS吉崎氏は「ネットは黒船だが、テレビと共存する道を選ぶ」という趣旨の話。
TX加増氏「双方向でないとダメ、という、そういうことを考えるのは僕はナンセンスだと思うんですよ。決して、それは特性というモノがあって、テレビというのはいろんなジャンルがありますしね。決してつながることにこだわることは、全くないと思いますね。視聴者のかたがどういうふうに番組を見ているか、というのは非常に重要なツールで、番組が終わると、2ちゃんねるからブログ、ホームページ、検索でともかく自分の番組がどう見られているか、一週間単位でずーっと見て、それから、番組に寄せられる厳しい意見が多いんですけど、それを次のことに役立てていこう、ということで、我々ネットやコンピューター、使ってはいるんですが、あえて双方向、ということにこだわらなくていいんじゃないか、と思います」

ドワンゴ夏野氏は、日本は多チャンネルが実現していない、いまだに(地上波の)チャンネルはヒトケタ台、ネットを使って双方向感を出す、と語る。
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双方向性の話がつまらない糸井氏は「今までテレビとくっつきすぎた」「”テレビ離れ”ではなく、”テレビくっつき”が直った」「24時間番組表を埋めている必要は無い」。嶌氏は「共感できるようなモノを作って欲しい」
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「あなたにとってなくてはならないメディアは」
マスメディアの位置が下がっているのか、の話のあと、テレビ局がオンディマンド配信すればHDDはいらない、という夏野氏に「同感です」と言う今井副会長、いろんな形態でコンテンツを届ける、と語る。

アメリカの「ネットテレビの衝撃」の紹介ビデオ。Joost社のコンテンツには「GAKI」(ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!)も。
「決まった時間に番組を見る機会は減るか、減らないか」
視聴者代表はほぼ同数、制作者は減らない、の答えが多い。
視聴者何人かに話を聞く。老人・三宅氏が、自分がテレビを見ている割合についてなんやかんや、と言いだし、対応に困る三宅アナ。
日テレ福士氏「”ニコニコ”も”ほぼ日”も、接触時間ではライバル」TBS吉崎氏「生のニュース番組を配信して、見る人がいますかね」映画「おくりびと」は、みんなで共有して味わいたいコンテンツ、と語る。

相変わらずオンディマンド配信を主張する夏野氏、パッケージ番組の制作者は「なぜその時間に見て欲しいのか」と制作者に質問。
藤村氏「インターネットとテレビは、全く違うモノである、と僕は思っています。僕がやってる番組は生放送ではないです。ただ、これ今腹が立ってしょうがないんですけど、みんな思ってると思うけど、やっぱりテレビのほうが、その時間になったら、テレビの前で見てくれ、という姿勢を、テレビマンは絶対言わなければいけない、と思うんですよ」
小説家の米田氏「1番か2番(=決まった時間に見るか見ないか)かじゃなくて、もっと別の見方をしてると思うんですよ」
藤村氏「僕がかい?」

夏野氏「実際、忙しいですから、”水曜どうでしょう”見たいけど見られないワケですよ」
糸井氏「一緒に見たいんですよ。人間って、一人ずつ生きていないんで。群れて一緒に遊びたい、という気持ちがあるんで、オンデマンドはいいこといっぱいあるんだけど、それだから(決まった時間に見る、ということが)なくなる、と簡単に思わないワケなんですよね」
夏野氏「オンディマンドで一緒に見ますからね。私と妻が見る番組はいつもオンディマンド」
広瀬会長がオンディマンドの「トレソーラ」の失敗談を語る。オンディマンドの放送料は入ってこない、と語る。ネット配信にこだわる夏野氏。話を変える三宅アナ。

会社員の山田氏は、インターネットに慣れてない人はどうすればいいのか、と語る。老人の三宅氏が、自分で調査した?資料を広げて話し始めるが、三宅アナに遮られる。寺谷氏「皆さん、どうしてそんなにテレビを見たがるんですか。オンデマンドにしてまで見たいと思わない」笑う糸井氏。
小説家・米田氏は「秋田県では(TBSの系列局がないので)ワールド・ベースボール・クラシックが見られない」地方格差だ、と主張。

インターネットについてTX加増氏「便利をそんなに求めるのもどうなのかな、と最近思ってましてね。バラエティみたいに、言い方悪いですけど、バカな時間をグダグダ過ごす、そういう部分があってもいいんじゃないか。なんでもかんでも情報化、とおっしゃいますけど、テレビはそういうものじゃなくて、いろんなバリエーションがあっていいんですけど、一概に情報でインターネットと比べ、オンディマンドでいつも見られる、そういう便利なことばっかり求めてどうすんだろう、テレビは独自の道があって、そういうグダグダして、なんていうか人間がどんどんギスギスしてるような気がしてね、グダグダした時間を楽しめる、そういうメディアでもあるんで、そういう視点からも、もうちょっと優しくテレビを見ていただきたい」スタジオ拍手。

スポーツの放送権料が高くなっている、という広瀬会長、WBC中継について「秋田はTBSの(系列)局がないのかもしれませんね」と。
これからのテレビに何を望むか、という話。またまた子どもの話の主婦・秋葉さん。お笑い好きの会社員でM-1に出た松内氏、M-1もR-1もキングオブコントも「ネットの意見とテレビの1位が全く違う、出来レースだ」と怒る。

「テレビが弱気になっている」と鶴間氏「もっと智恵をしぼっておもしろいものを作る」と語る。きくち氏「僕が作っている番組は、”母と子で見られる番組”だと思う。視聴率を気にして作っていない。見られるなら(テレビでもネットでも)どこでもいい」
糸井氏「テレビは、あったほうがいい、いうモノだと思うんですよ」スタジオ拍手。三宅アナが締めて終了。


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HTB藤村氏の熱い制作者魂。「水どう」DVDの副音声で、大泉洋に「組合活動ばっかりやってるから出世できないんだよ」と言われても、現場で作り続ける藤村氏。赤字だらけの道内テレビ局の中で、HTBだけがDVDやグッズ販売などで黒字、というのは、藤村氏ら制作者魂を持った人たちの貢献も大きい。

真摯に音楽番組を作り続けるきくち氏。テレ東加増氏の「グダグダした時間を楽しめるメディア」に同感。本来気楽に接するメディアなのに、見なきゃ死んでしまう、が如く必死になるのは滑稽。

テレビの広告費の削減は止まらないと思うので、今後のテレビは再放送や放送休止、通販番組が増える可能性があるが、昔は良かった、今のテレビは子どもに見せられない、などと嘆く前に、「テレビ依存症」を直すいい機会であるかも。自戒も込めて。



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(3月24日追記)
視聴者代表の意見をまとめました。
★制作者と視聴者の討論番組「テレビの、これから」“浅野さん”の全発言
http://tvmania.livedoor.biz/archives/51604988.html